【第一弾】【夏休み緊急会議】探究学習、正直どこまでやりますか?!~現役教員の本音と建前~<Part 1>

2020年度にスタートした新学習指導要領。

中でも「探究学習」は、2022年度から本格運用が開始されることもあり、ひときわ先生がたの注目を浴びています。

文部科学省が新学習指導要領のキャッチコピーとしている”生きる力 学びの、その先へ”のとおり、

探究学習では「これからの自分の生き方を自ら考え、切り開いていくための必要な資質や能力の育成」を目標としています。

しかしその一方で、「実際どこまでやったらいいの?」と戸惑いを感じている先生がたもいらっしゃることでしょう。

・そもそも「探究学習」とは何なのか?

・各教育課程によってどのような違いがあるのか?

・他の教科との関わりや評価はどうしたら?

など、先生がたがリアルに直面する疑問や悩みにお応えすべく、緊急企画と題して下記4名の先生方にコトバンク株式会社・代表取締役の小泉がお話を伺いました。

【第1部】聖ヨゼフ学園中学校・高等学校 久保 敦 先生

【第2部】山脇学園中学校・高等学校 高瀬 聡伸 先生、かえつ有明中・高等学校 田中 理沙 先生、東京女子学園中学校・高等学校 難波 俊樹 先生

●聖ヨゼフ学園・久保先生のご紹介

(小泉)まず第1部は「今さら聞けない探究学習のポイント」ということで、久保先生にお話しいただければと存じます。久保先生、よろしくお願いいたします。

(久保先生)よろしくお願いします。こんにちは。今日はたくさんの方に来ていただいて嬉しいですね。

(小泉)1週間前に告知したのに100名の方がご参加いただいているということで、本当にありがとうございます。逆に言うと、やはり皆さん関心が高いというか、「探究、本当に来年からどうする?」と思っていらっしゃるのかもしれませんね。

(久保先生)と、思いますね。「探究」は皆さんの悩みの種だと思います。何かの良いヒントになればと思っていますので、ぜひ期待して待っていてください。

(小泉)今日、なぜ久保先生にお話をお伺いするかといいますと、まず久保先生は、今もIB推進部首席アドバイザリーという肩書きがあるのですが、ずっと国際バカロレアの日本での普及に尽力されてきた方でいらっしゃいます。今回はIBと「探究」、「総合的な学習の時間」と「探究」の違い、「総合探究」と「科目探究」、この3つを久保先生にお伺いするわけですが、一点目のポイントとして、国際バカロレアと「探究」がほぼ同じである、という結論からスタートさせていただきます。では最初に、久保先生とIBの関わりに関して、まず簡単にご説明いただいてもよろしいですか。

(久保先生)そうですね。私は教員生活36年目ぐらいになりますが、大学を出て、普通の学校へ入ってから海外の現地校で教鞭をとりました。そこでIBという言葉を知り、日本に戻ってからは帰国生の教育の勉強をしてきました。実は15、16年前ぐらいに、日本にこのIBを導入したいというグループを作って、文科省の方にIBの思想とやり方、つまり今の日本の教育に必要な「探究的な学び」を導入できないか、と何度もお願いに行ったのですが、初めはずっとお断りをされていたんですね。しかし、ある文科大臣に変わったときに、このIBへの方針が大きく変わって、今は200校を目指して167校まで増えています。そういう活動をきっかけに、IB的な学びをちょっと実践してみようと動き出したのが始まりです。

京都に立命館宇治という学校がありまして、そこはIBがかなり英語でトップ級の学校でしたので、もっと流行りを知りたいと思い、東京から京都へ引っ越しました。IB・DP(国際バカロレア・ディプロマ・プログラム)の勉強、それからMYP(中等教育)・PYP(初等教育)で実際にやっているIBの授業を見ながら研究をして、全部の学校に導入するかは別としても、やはりIB的な、「探究的な学び」は日本の学校に必要だなと感じています。

今、横浜の聖ヨゼフ学園でPYPが認定されているので、現在は来年ぐらいにMYPの認定ができればいいなと思いその準備をしております。


●IB(国際バカロレア)と「探究」はほぼ同じ?

(小泉)IBと「探究」がほぼ同じというお話を伺いましたが、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?IBというのはどういうもので、「探究」はどういうものだからほぼ同じ、と言えるのでしょうか。

(久保先生)IBが目指しているのは、知識量ではなくて、学んだことをいかに自分の中に落として活用できるかです。活用するところで「探究」が生まれてくる。

言葉は悪いですが、日本の教育では「詰め込み教育」がずっと続いていました。情報量も膨大で、ある人が試験を受けて取った点数から偏差値を算出して「あなたの偏差値だったらこの大学」と決まっていたけれど、そうではなくて、「学び」というのは他者がいて自分がいて深く学ぶことだ、と。そういう学びをさせたいというのがIBなのです。

だから、ベースになる教材というものはありません。IBというのは16個の概念を子供たちが習得できればいいというもので、その概念を習得するにはどういう教材を作って、どういう探究の問いを作ればいいか、というのは教員も勉強しながら教材を見つけてくる必要があります。教科書の1ページから100ページまでを教えて「はい、おしまい。これ全部覚えといてね。テストするから」というのとはちょっと違う。

(久保先生)ですから、IB=「探究」というのは、グループワークだけではないですが、他者と共に知識を学びながら、他者からも学び、自分の知識も誰かに教え、共に学び合う。今、文科省が新学習指導要領で言っているものに似ているような感じがしません?

(小泉)しますよね。

(久保先生)文科省の学習指導要領がIBの方に寄せてきたというか。そして、今度は高校の学習指導要領の中に「探究」という名前が出始めています。おそらく全部「探究」にしたいのでしょうけど、全部「探求」とつけてしまうと現場の先生がたがお手上げ状態になる可能性もあるので、一部で探究的な学びをしてほしいということになったのだと思います。

IBは全ての科目で探究をし、さらに教科横断をしたり、外の社会ともつながったりすることが求められるので、その点が、これからの文科省が育てたい人物像と一致したのだと思います。ですから、これを聞いている皆さんがIBを一生懸命勉強していただければ、「こういう形で自分の授業を変えていけば探究的な授業、IB的な授業ができるんだな」というのはご理解いただけると思います。


●「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」の違い

(小泉)文科省のこの資料を見てもいまいちよくわからなくて、先生に教えていただければと思ったのですが、「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」は、どう違うのでしょうか?

(久保先生)中学校まではまだ総合の時間になっているじゃないですか。高校になると「探究」に変わっているのはどういうことかと言うと、高校になると、生徒に学力差が出てきたり、あるいは将来を目指す道が変わってきますよね。大学に進学する生徒もいるだろうし、専門学校に行く生徒、社会に出る生徒、海外に行く生徒もいます。あるいは、興味関心もどんどん細分化されていきます。

また、多様性ということで海外からいろいろな留学生が入ってきているので、中学校・小学校のように、一つのテーマで全員同じように「はい、これをやって」という授業ができなくなってきています。そういうことをしていると、これからの社会では生きていけないとまでは言わないですけど、良い人材が育たないので、高校を「総合的な学習」から「探究」に変えたというのはあるでしょうね。一人一人が興味関心を持っていることを徹底的に調査研究、そして発表できるような時間を確保したということです。

本当は各科目でやってほしいけれど、そこまでは難しいので、まずこの「総合の時間」をうまく活用して、教科横断的なことも入れつつ、外とつながりながら、探究の時間では自分の研究をし、それが総合型試験、選抜試験につながっていく。そういう流れづくりを、文科省のほうで進めています。自分はこういうことに興味関心があるから、この大学のこの学部、この学科の授業を受けたいんだ、というような形に文科省が舵を切ったというか、そうならざるを得なかったので、これが「探究」になったということですね。

(小泉)そうすると、本当に自分のキャリアすら見えてくるような「探究」だとベスト、みたいなところなのでしょうか。

(久保先生)そう。日本人は受身じゃないですか。受身の授業をしているので、何か探究的な課題を持った先生が来ると思っているかもしれませんが、それでは駄目です。ゼロからイチを生み出すような生徒にたくさん出てきてほしいので、各生徒が興味関心のあるものを自分で見つけて、自分でしっかりと解決をする。ある程度の仮説でもいいので「こういうことだったらこうなるよ」という道筋を作っていける力を高校時代につけさせたいのです。線路を引いてあげて、しっかりと先生が教えてあげても、高校で少し手放しをしてあげないと、そのまま受身的な人材になってしまう、ということにやっと文科省が気づいてくれたというか。

(小泉)自分自身の生き方を考えられるのが、この「探究活動」ということですね。


●これまでの教育行政とIB

(小泉)教育行政を振り返ってみますと、2002年から「総合的な学習の時間」というのが始まって、この運用されている中で2013年から第2次安倍内閣によって、IB認定校を200校まで増やしましょうという目標が設定されて、これもずっと続いていると。この中でさらに今回2020年、来年度からも本格運用ということで「総合的な探究の時間」がスタートするということで、「探究」という言葉が降ってわいたわけではなくて、もともとこういう2013年度からの活動があった中で。ただ、IB認定校になるのは結構なお金とか労力がかかるんでしたっけ。

(久保先生)そうですね。ある程度資金もかかりますし、あと先生がたとのコラボレーションがすごく大切なんですね。これはやっぱり日本の教育がまた一つの課題でもあって科目でこうわかれてしまっているので〇〇はちょっと別なんですけど、科目でわかれると隣の科でやってるものと自分でやってる教えてる科目の内容っていうのが、ほとんどの情報の共有がされていない。もしかしたら同じことを教えている可能性がある。

あるいは、そこはオーバーラップして、一緒に教科横断ができる可能性があることすら、僕らは気付かなかったというかやってこなかった。でも本当は、元々その学びっていうのは、綺麗に科目で分けられるものではないので。意図的にこうね、理科社会とか分けてますけど、やっぱり元々は我々人間はなぜとか、どうしてとかいうところから始まって、それが理科的なことだったり社会的なことだったり、あるいは家庭科的なことだったり体育的なことだったり。でも、その根幹は繋がっているっていうのが、ようやく課題として気づきだしてというのかな、フォーカスしてもらって。この安倍内閣のときの文科大臣が、それだったらIB校をつくろうということで、ゴーサインを出してくれたんですけど。なかなかね。

今私もこのアドバイザーで入ってますけど、先生がたがお互いに手を取ってやってくっていうのはあの大変なことはなぜかというと、文科省が言われている仕事と、それからIBがやらなきゃいけない仕事をちょっとダブルでやらなきゃいけないので、仕事が重なるんですね。ですから、そこをうまく文科省はもうちょっと融通をきかせながら、文科省の仕事をIBに寄せるんであれば、仕事を削りながら、学校の中の仕事を削ってIBの認定校になるような、教員の働き方改革もあるのでうまくやっていけば、僕はね、200校っていうのは無理な数字ではないと思っているので、各県に例えば最低でも1校、あるいは2校、IB校はあってほしいなと思って。

一番僕が危惧しているのはね、東京の中にIB校ってすごい少ないんですよ。結構東京以外の県で、県とか道にIB校が多くて、東京都内に少ないんです。これがね、ちょっとクエッションなんですね。なぜこの東京の中にIB校の数が少ないのかっていうね。

 (小泉)今、東京の中に少ないという問題がありましたけど、やはりそのIBっていうのは割とフルスタックじゃないですけど、本当に認定している機関が別にあって。文科省じゃないような、スイスに本部がある、IBの運営元があるわけですよね。があって、しかもちゃんとまあ認定校になるためには、この厳しい監査だったり、そういうものを満たして運用しつつ学校全体で本当に舵を取り、舵取りしていかなければならない。ある意味ではかなりいいかもしれないけどかなり敷居が高いと。っていう中で、そこのエッセンスを汲み取って広く普及させようというのが今回の。だからIBのエッセンスを文科省が取り入れて、広く普及させようというのが今回の学習指導要領の改訂であると。なので、我々はIBイコールこの「探究」ということで、要はIBを見てエッセンスを取り入れていけば成功できるのではないかといったところでしょうか?

(久保先生)そうですね。


●「総合探究」と「科目探究」の違い

(小泉)最後に「総合探究」と「科目探究」、これもちょっとわかりづらい部分だと思いますので、ポイントがあれば教えていただければと思います。

(久保先生)「総合探究」というのは「教科横断型」で、何ていうのかな、さっきも言ったように、本当そうですよね。自分の好きな興味関心あるものを徹底的にその探究していくと。強化環境っていうのは、やっぱりどうしても高校だから科目にわかれてるじゃないですか。英語とか理科とか社会とか、その中でもやっぱり探究的な学びをして、生徒に覚える覚えろこれを覚えてこうして、これはこういう形でこの大学では受験は出るぞっていう教え方ではなくて、生徒の興味関心があるような問いをちゃんと作って。

あるいは、その教科が好きになるかどうかは別として、できればね、興味関心を持てるような、好きになるような、その時間になっていく。あるいは、これを勉強すると、実際こういうところに役立つとか、こういう知識を獲得しとけば、ここに活用できるっていうのを、だから、教科を横ざしにするか、あるいは縦にいくかっていうことを、多分ね横と縦をうまく実践していくっていう。

なので多分文科省のほうでは、総合的な学習を探究の横ざしにグググググッて入れてるんで、「科目探究」っていうのは縦ざしにこう入ってるんですね。そうすると、縦と横がうまく重なり合うと、専門的な科目の探究と教科横断型の自分の好きな関心が横になれば、さらに「科目探究」がもっと深まっていくっていうんだったら、でこぼこはすると思うんですよ。この探究をやっていくとね。好き嫌い関心があるので。数学、理系が好きな子は理系も行くだろうし文系が好きな子は文系行くし、あるいは文理融合で行く可能性もあるので、

だから、そこをうまく先生がたが、もう最後言うと先生がたが「探究者」じゃないと、駄目なんですよ。教師とかただ教える人、ティーチャーじゃなくて。自分が常にやっぱり探究者で。「なぜこれはこうなんだろう」、あるいは「これをしているときには、どうすれば生徒は関心を持って社会とつながることができるのか」と常に、常にこう探究心を持ちながら、日々を送っていく教員でないと、「科目探究」とか「総合探究」ってなかなかできづらい、指導しづらいので。

その点はね、皆さんぜひIBのとこから学んでいただく、あるいはいろんな今日のパネラーの人からもきちんと話を聞いていただいて、学んでいただきたいなと思ってます。

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