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図書館では、中2の社会の授業が行われていた。「もし○○が○○だったら」という形で奇想天外な歴史の「if」を設定し、そこからどんなことが生じるかを考えるという課題の最中だった。もちろんただの妄想ではダメだ。さまざまな資料にあたり、歴史上の実際の因果関係をもとにした「アナザー・ストーリー」を組み立てるのだ。
たとえばある生徒は「世界三大宗教の聖地の場所が別々だったら」という問いを立て、「十字軍遠征がなくなる。そうなると、十字軍のもたらす富によって生まれた裕福な市民も誕生しなかっただろうから、ルネッサンスも起こらなかったし、宗教改革も起こらなかったのではないか」という仮説を立てた。
またある生徒は、「鉄砲が伝来していなかったら」という問いを立て、「鉄砲と同時にネジをつくる技術が日本に伝わった。鉄砲が伝来しなければ技術発展が遅れただろうし、戦争の戦術も違ったはず」という仮説を立てた。それに対して担当教員の田中潤さんは、「軍隊の組織も変わっていたはずだよね」と付け加えた。
「資料の本は一字一句読む必要はありません。資料としては、パラパラ読みして必要なところを読めばいい。でも1つの資料にあたるとそこには参考文献も載っていて、さらにどんな資料をあたればいいかが見えてくるはずです」と田中さんがアドバイスする。私が学校や教育について資料にあたるときと同じだ。
中3の社会の授業では、「年金制度を持続可能にするためにどうすればいいかを批評家として語る」という課題に、4〜5人ずつのグループで取り組んでいた。「1時間をかけて準備をして、次の授業でチームごとに発表します」と担当教員の日野田昌士さん。1年間を通して基本的にこの形式で授業を進めるのだという。それで教科書の内容は網羅できるのか。