【CLIL(クリル)って何?どこから来て、何を目指しているの?!】

みなさん、初めまして。

来たる3月29日に、ESN英語教育総合研究所(以下ESN)主催の春期英語教育セミナーにて、CLILについてお話をさせていただきます、上智大学言語教育研究センターの山ノ内麻美と申します。現在は、主に小学校と大学で英語を教えております。

ESNさんからのご提案で、当日に向けて、CLILについてこちらのブログで発信させていただけることになりました。CLILについて書かれている専門書や、論文、または実践などの紹介を通して、CLILについてご存知ない方や、聞いたことあるけど、いまいち既存の教授法と何が違うのかしらと感じていらっしゃる方々の理解を深めるのに、少しでもお役に立てたら嬉しいと思います。

一回目の今回は、CLILとは何か、大まかなコンセプトやCLILのうまれた背景について書きます。

ヨーロッパでは、20年近く前から広まりを見せているCLILですが、ここ日本でも、小学校から大学まで、CLILをカリキュラムに取り入れる学校が出て来ました。

では、CLILとは一体どのような指導法なのでしょうか?

• CLILとは何か

最近では、大手英会話スクールなどがテレビのCMで「CLILはじめます!」と宣伝していたのをお聞きになった方も多いのではないでしょうか?(研究者の間では、結構話題になりました!)

CLIL(クリル)とは、Content and Language Integrated Learning の略語で、内容言語統合学習と訳されています。

言い換えるならば、教科やテーマなど内容のあるものが学習の中心であり、英語(目標言語)は、そういった内容学習のための道具である…という学習理論です。

つまり、be動詞や一般動詞を教えることを目的とするのではなく、数学や歴史について、または、環境問題やファッションを学ぶための手段として英語を学習するという考え方です。

• immersionとの違い

数学や歴史などの教科を英語で学習すると聞くと、immersionと同じなのでは?と思われる方もいるかもしれません。

一般的に、immersionというのは、英語の “immerse” 「水に浸かる」という単語から由来する通り、教科内容を目標言語に浸りきった状態の言語獲得のことを表します。多くの場合は、immersion programといって、長期計画で小学校1年生から開始し、卒業するまで実施されます。

immersionやCLILと一言で言っても、中身は多種多様であり、一概にくくることは難しいのですが、以下のようにまとめてある表1があるのでご紹介します。

表1

 CLIL (A)CLIL (B)Immersion
誰が教えるのか(いつ教えるか)CLILを担当する、英語教諭(英語の授業時間で行う)CLILを担当する教科教諭(教科の授業時間で行う)Immersion を担当する教科教諭
言語指導(ここでは英語とする)一般的な授業において、活動する上で必要な英語(話し合いに必要な表現、質問をする時に必要な表現など)に加えて、教科に関連したテーマを理解するのに必要な英語(その教科特有の用語や表現など)教科内容を理解するのに必要な英語をその都度指導するほとんど、もしくは一切、英語の指導はしない
授業の目標は何か英語指導教科指導と英語指導の両方教科の指導
指導内容は何か英語のカリキュラムとさらに教科教諭のサポートをするための教科特有の表現教科内容とそれを理解するのに必要な英語の指導教科内容

(Dale & Tanner 2012, p. 4)

表から見て取れる通り、一番の違いは、言語指導にあると思います。

immersionは、児童期から目標言語に触れている時間が長いため、母語の習得の環境に似た自然な形での習得を目指しています。故に、あえて教科指導の中で、言語指導を切り離して行うことをしません。

一方で、CLILは、CLIL (A)と(B)との間に違いがある通り、様々なタイプがあり、開始時期などに特に決まりはなく、言語教育の中で行われるケースもあれば、教科の授業で行われることもあり、学校によって様々な形が存在します。(CLILの多様なタイプについて詳しくは、また別の時に触れますね)

そして、CLILという名前の通り、内容と言語を統合して行うことが主眼にあるため、必ず言語指導が入ります。

私が知っている日本でのCLIL実践校を例に挙げると、

・小学校で算数の授業を英語で学習する

・高校の英語の授業で、様多様性というテーマを英語で深く掘り下げて学習する

・大学の英語の授業で、日本の観光について4技能を使って学習する

…といった様子です。

このように、immersionとCLILは、言語教育への考え方が大きく異なります。• どこから来たの?

CLILは、1995年に欧州評議会が出した「母国語+2ヶ国語」(“the 1+2 principle”)という理念のもとに、EUの国々の、言語や文化の多様性の保存や、政治的、経済的必要性のもとにうまれました。

日本では、少し考えにくいかもしれませんが、

様々な言語的や文化的な背景を持った人々が、同じ国に共存しているヨーロッパでは、母親と父親が違う国の出身であり、住んでいる国の公用語が自分の母語と異なる状況は、少なくありません。

例えば、ドイツに住んでいて、母親はフランス語が母語で、父親はドイツ語が母語で、

家ではフランス語を話すけれど、学校ではドイツ語で授業を習い、外国語として英語を習う、などといった環境が珍しくないのです。

そのような環境で、進学や就職に大きな影響を与える言語教育は、国、さらにはEUにとって重要な問題であり、「ヨーロッパ市民」の育成を目指して、生まれたのがCLILというわけです。

このような背景を知っていると、次回説明するCLILのフレームワークの理解に繋がると思います!

では、今回はこの辺で!

参考文献:・ 『CLIL(内容言語統合型学習):上智大学外国語教育の新たなる挑戦–第1巻 原理と方法』、 渡部良典、池田真、和泉伸一、上智大学出版(2011)・ Dale, L., & Tanner, R. (2012). CLIL Activities with CD-ROM: A Resource for subject and language teachers. Cambridge University Press.

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